パイプドHD Research Memo(4):2017年2月期は期初予想を下回ったものの、マイナス要因は払拭 – 株経ONLINE



■業績動向

  1. 損益状況
    パイプドHD<3919>の2017年2月期決算は売上高4,802百万円(前期比19.9%増)、営業利益845百万円(同45.6%増)、経常利益864百万円(同54.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益404百万円(同63.1%増)となった。期初予想(営業利益1,000百万円)に対しては大きく下回る結果となったが、期中に下方修正した予想は上回った。期初予想を下回った主な要因は、成長を期待して設立したEC関連子会社が期待に反して不振であったことに加え、期中に発生した同社製品への不正アクセスの影響で新規営業を約1ヶ月間完全に停止したことなどによる。

この不正アクセスは同社にとってある意味致命的とも言える問題であったが、現在では完全に修復・解決し、顧客からの信頼も回復しており、むしろ内部管理体制は強化されたと言える。また不振であったEC関連子会社(ウェアハート)は既に2017年2月末で解散しており、これ以上のマイナスの影響はなくなった。さらにその他の多くの子会社の業績は、予想より遅れてはいるものの順調に拡大しており、内部の管理体制なども強化されている。会社側は、「この決算期中に悪い膿は出し切っており、次の成長のための準備は整っている」と述べている。また、期初予想を下回ったとはいえ、前期比では45.6%の営業増益を達成しており、この点は評価に値するだろう。

(1) 有効アカウント数の推移
同社の主たる事業はクラウド型であることから、その有効アカウント数が業績動向を大きく左右する傾向にある。2017年2月期末の有効アカウント数は10,676(前期末比58減)となった。全体の有効アカウント数は減少しているが、比較的単価の低いアカウント数が減少し、比較的単価の高いアカウント数が増加していることから売上高は増加している。今後もこの傾向が続く可能性があり、単純に全体の有効アカウント数だけでなく、その内容も注視する必要があるだろう。

(2) セグメント別損益状況
セグメント別売上高は情報資産プラットフォーム事業が3,386百万円(同11.4%増)となったが主力製品である「SPIRAL®」が順調に増加したことが要因。広告事業の売上高は「スパイラル アフィリエイト®」がけん引し231百万円(同4.4%増)となったが、前期比では微増にとどまった。ソリューション事業の売上高は1,183百万円(同59.3%増)と大幅増収となったが、ウェアハート及びカレンが新規連結に加わったこと、ペーパレススタジオジャパンや受託/制作事業が好調であったこと、EC運営が増収となったことが主要因。

また、セグメント別の営業利益は、主力の「SPIRAL®」が好調に推移したことなどから情報資産プラットフォーム事業が853百万円(同54.4%増)となった。広告事業の営業利益は55百万円(同3.0%増)と前期比ではほぼ横ばいにとどまった。一方でソリューション事業では、ウェアハートの先行投資やペーパレススタジオジャパンの人件費増により62百万円の営業損失(同25百万円の損失)となり、大幅増収にもかかわらず損失額は拡大した。このため、会社はEC運営事業の縮小を決定し、2017年2月末でウェアハートを解散した。

(3)「SPIRAL EC®」への不正アクセスの影響について
2016年6月に同社の主力製品の1つであるアパレル特化型プラットフォーム「SPIRAL EC®」において、外部からの不正アクセスがあり、個人情報が不正に閲覧された可能性と、個人情報流出の痕跡が判明した。これに対して同社では、早急に全顧客に対して以下のような対応を行った。

a)初報(6月22日)
発生事象や影響範囲、原因や発生経緯、それを踏まえた応急的な対応や再発防止に向けた方針等について報告。

b)第2報(6月30日)
応急的な対応と再発防止策に対する追加報告。再発防止策の1つである「不正アクセス対策室」新設について、その背景と狙いを補足説明。

c)第3報(7月15日)
第2報後に実施した応急的な対応について追加報告。再発防止策について社外セキュリティ専門家の技術顧問就任及び緊急セキュリティ対策会議の設置を報告。

d)第4報(7月27日)
第3報で報告した社外セキュリティ専門家の技術顧問を含む緊急セキュリティ対策会議において、「現状のシステムについて一定の安全性が確認できた」ことを報告(安全宣言)。

また、不正アクセスを受けた「SPIRAL EC®」だけでなく、別のシステム構成である主力サービス「SPIRAL®」についても現状のシステムの安全性を改めて総点検し、安全性が確認されたことを公表した。このように不正アクセス発生以後、同社では既存顧客に対して即座に機敏な対応を取ったが、これには全社員が一致団結し一丸となって対応にあたった。そのため、約1ヶ月間は新規営業を停止せざるを得ない状況となり、これが既述のように期初予想が未達となる要因の1つともなった。また、会計上では、損害賠償やサービスのセキュリティ強化に伴う一時費用として約15百万円の特別損失を計上した。

今回の不正アクセス事件は、「セキュリティ面で安全」をセールスポイントの1つとしてサービス(ソフトウェア)を提供している同社にとっては致命的な問題であり、場合によっては「事業の継続が疑われる」可能性もあった。しかし、このような危機的な状況において、同社では全社員が一丸となって迅速かつ誠実な対応をしたことで、サービス(ソフトウェア製品)の修復・改善が進んだだけでなく顧客からの信頼喪失も最小限に止めたと言える。事実、不正アクセス発生後の解約件数はわずか数件にとどまっており、この事実は顧客が引き続き同社を信頼していることを物語っている。

今回の不正アクセス問題は一時的には同社にとっては危機的状況であったが、現在はサービス(製品)の安全性は完全に確保されているどころか、むしろ一段と強化されたと言ってもよいだろう。社内的には1ヶ月間の新規営業の機会損失があったものの、社員の団結力や業務に対する意識は以前にも増して高まっており、目に見えないプラス効果をもたらしている。さらにアカウントの解約数はわずかにとどまっており、顧客からの信頼は失われていないと言える。したがって、現在では今回の不正アクセス問題は完全に解決し、同社の事業への影響は皆無と言える。

  1. 財務状況及びキャッシュ・フローの状況
    2017年2月期末の財務状況は、資産合計は5,064百万円(前期末比1,307百万円増)となったが、主に1,500百万円の銀行借入れを行ったことに伴い現金及び預金(流動資産)が1,223百万円増加したことによる。負債合計は2,974百万円(同1,051百万円増)となったが、主に長期借入金の増加に伴う固定負債の増加1,105百万円による。純資産合計は、256百万円増加して2,089百万円となったが、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益準備金の増加404百万円による。

また、営業活動によるキャッシュ・フローは623百万円の収入となったが、主な収入は税引前当期純利益の計上775百万円、減価償却費191百万円、法人税等の支払い306百万円などであった。投資活動によるキャッシュ・フローは179百万円の支出となったが、主にソフトウェアを中心とした無形固定資産の取得169百万円による。財務活動によるキャッシュ・フローは779百万円の収入となったが、主に借入れによる収入921百万円(ネット)、配当金支払いによる支出144百万円などによる。この結果、期間中の現金及び現金同等物は1,223百万円増加し、期末の残高は2,143百万円となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

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