【電子版】論説室から/IoT、「ラスト100メートル」の壁 – 日刊工業新聞



 暦の上ではとっくに冬だが、メディアでは9-11月の3カ月を秋とすることが多い。これにならえば、本稿が掲載される11月30日は、秋の最終日ということになる。

 例年同様、この秋も展示会や学会など多くのイベントがあり、そこに向けてメーカーは新製品や新技術を発表した。とくに大手電機メーカーの場合、近年では伝統的な展示会だけでなく、大規模なプライベートショーを開いて自社の技術力をアピールするケースもある。各種の発表会や展示会は、第一線の開発者から直接、話を聞く貴重な機会だ。

 モノづくりや社会インフラにかかわる技術は、各社ともIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)に関連するものが目立つ。中でも大きなビジネスへの成長を予感させたのは、機器の不良や故障を予測・検知するサービスである。

 日立製作所は、インフラ関連機器などの寿命があとどれだけかを推定する新サービスを始めた。機器のセンターから得られる各種の情報をAIで解析し、過去のデータと比較して余寿命を推定する。保守コストを抑制し、重大事故による損害の未然防止を目指す。

 三菱電機は、同じくインフラ機器の各種情報を収集・分析するためのIoT基盤を開発した。広域に分散する機器の情報をインターネットを通じて集める。インフラの場合はセキュリティーが重要であり、その点に同社の技術を盛り込んだ。AIで集めたデータを分析し、監視や保守を効率化する。

 両社とも、よく似た技術といえる。モーターや発電機などの既存顧客向けのサービスとして売り込むことが予想される。稼働すれば保守点検のコストを大きく削減できるだろう。ただ、どちらも最大の課題はAIによる分析ではなく、実際にデータをどうやってとってくるかいう点が興味深かった。

 故障予知のためには機器の振動や騒音のデータをとる必要がある。しかし既存のモーターや発電機には通常、そうしたセンサーはついていない。どこにセンサーをつけるか、どうやって配線するか、そもそもセンサーを設置できる環境なのかどうか。難題であり、個別に手探りで解決しなければならないのだという。

 かつて通信のブロードバンド化が進む中で、最終ユーザーまでどうやって線をひくかという「ラスト・ワン・マイル」の議論があった。インフラ機器からのデータ集めには、いわば「ラスト100メートル」の壁がある。将来、冷蔵庫やエアコンなどの家庭用機器もIoTの対象とするなら、やはり同じ問題が起きるだろう。

 日立や三菱電機とは顧客の異なるNECは、やや違ったアプローチを模索している。得意の画像認識技術を使い、カメラの画像分析から製品の不良や不揃いを検知する。こうした技術を組み合わせれば、新たな可能性が開けるのではないか。

 一般にIoTやAIは、コンビューターの演算処理やソフトウエアの技術だと思われがちだ。しかし現実社会のモノを動かしたり状況を捉えることを考えると、よりリアルな技術が必要となる。

 おりしも東京ビッグサイトでは、今秋の大型展示会の掉尾(とうび)を飾る「2017国際ロボット展」が12月2日まで開催中。リアルな技術の代表であるロボットにも学びたい。

(加藤正史)



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