三菱重工が日立に激怒!火力合弁の巨額損失めぐり泥仕合



2012年、大宮英明・三菱重工業社長(当時。現会長、写真左)と中西宏明・日立製作所社長(同。現会長)が、MHPS設立を発表。“強者連合”の誕生に期待が集まった Photo by Takahisa Suzuki

 コードネーム「ドラゴン」。こう名前を冠された日立製作所のプロジェクトチームが、その名の通り火を噴いている。

 ドラゴンは、もともと三菱日立パワーシステムズ(MHPS)を設立するに当たりつくったチームだ。ライバルの三菱重工業と火力発電事業であえて手を組み、米ゼネラル・エレクトリック、独シーメンスという“巨人”に立ち向かう存在を目指す──。そうした気概を持って名付けられたが、足元では意味合いが変わってしまった。

 7月末、三菱重工が日立に約7700億円の支払いを求めて第三者機関に仲裁を要請。この対応にてんてこ舞いだというのだ。

 問題の震源は2007~08年に日立側が総額約5700億円で受注した南アフリカ共和国の火力発電用ボイラー建設プロジェクトだ。

 振り返れば、南アプロジェクトは設立検討時から両社にとって最大の懸案事項だった。南アという、大型プラント建設に不慣れな上、ストライキも多い土地で80万キロワットの発電システムを12基も造るとあり、損失発生は必至とみられた。当時ですら、両社の負担割合を決められなかった経緯がある。

 結局、統合前に発生した損失は日立側が、統合後のそれはMHPS側が負担すると取り決め、日立が調整金を支払うことで合意した。取りあえずは個別プロジェクトの瑕疵には目を瞑り、統合作業を優先させたわけだ。

「7700億円」はブラフ

 ところが、である。統合後、工事の実損分である約3800億円を請求した三菱重工を、日立は袖にした。「(実損分の全額負担を)のまされると分かっていたら、そもそもこの統合は成り立っていなかった」(中西宏明・日立会長)というのが日立の言い分である。

 当然のことながら三菱重工は怒り心頭に発した。自らの知見があったからこそこの程度の出血で済んだという思いもある。

 今年1月、三菱重工は契約書にある損失の算出方式にのっとり、当初の請求額の2倍に当たる約7700億円の請求に踏み切った。この金額は、「いわば日立が単独でこのプロジェクトを抱えていたとしたら発生したであろう損失を織り込んだもの」(三菱重工関係者)である。

 約7700億円という金額は、「三菱重工が交渉を有利に運ぶためのブラフ」というのが複数の両社関係者の見立て。現実的には、実損の約3800億円の負担割合を協議することになりそうだ。

 ただし、日立は損失に関して1000億円超の引当金を積んではいるものの、実損分の全額を賄える額ではないもよう。三菱重工も3182億円を南アプロジェクト分として資産計上しており、「取りっぱぐれれば損失が出る」(小口正範・三菱重工CFO)。

 仲裁機関マターとなっても、両社の泥仕合はしこりを残すことになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら



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