NTTデータとイノベーションを起こす ビジネスコンテストに参加したベンチャー11社



NTTデータ 第6回グローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト レポート

2017年09月14日 07時00分更新

文● 鈴木 淳也(Junya Suzuki) 撮影●永山 亘 編集●ガチ鈴木/ASCII STARTUP

 NTTデータ主催のスタートアップ企業を対象としたビジネスソリューション提案コンテスト“豊洲の港から Presents第6回グローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト”本戦が2017年8月29日、東京・豊洲の本社ビルで開催された。2014年にスタートした同コンテストは年2回ペースで開催されており、第6回目にあたる今回は日本から7社、韓国から2社、台湾から1社、シンガポールから1社の計11社がプレゼンテーションを披露した。医療、IoT、AI、FinTechまで、さまざまな分野のスタートアップが集まった第6回のコンテスト。次の第7回は東京を飛び出し世界14ヵ国15都市で2017年12月から2018年3月まで開催される予定だ。

日本から世界へ、スタートアップに3つの価値を提供する

 スタートアップ企業を対象としたビジネスコンテストは多数あるが、NTTデータの開催するコンテストの特徴はそのエコシステムにある。国営企業としてスタートしたNTTグループの一社であるNTTデータは、システムインテグレーターとして社会インフラとなるような数多くのICTプラットフォームを整備し、その技術開発を先導してきた背景がある。世界200ヵ所以上に拠点を持ち、国内外をカバーする広大なネットワークを持つ。

 8月29日に開催されたグランドフィナーレの冒頭で挨拶したNTTデータ オープンイノベーション事業創発室の残間光太朗室長は、コンテストを通じて参加したスタートアップに3つの価値を提供できると述べている。

 ひとつは世界中の拠点を結んだNTTデータの顧客との提携で、インバウンドとアウトバウンドの両方をカバーする仕組みを通じて国内外にビジネスを展開する手助けが可能だという。2つめはNTTデータを含むNTTグループが培ってきたソリューションと技術力で、既存のインフラとスタートアップのアイデアを掛け合わせることで新しいイノベーションが実現できると述べている。そして3つめが資金面での支援で、NTTデータとの協業に向けて、ビジネスの拡大やアイデアの実現を助けるものだ。

NTTデータ オープンイノベーション事業創発室 残間光太朗室長

 このように実施されるコンテストがもたらすメリットについて、残間氏は「Win-Win-Win(トリプルWin)」と表現している。つまり、公共・法人・金融分野に広がるNTTデータの顧客、コンテストに参加したスタートアップ企業、NTTデータの3者が「Win-Win-Win」の関係となることで、世界を変えるようなイノベーションを実現できると考えている。

 10月10日まで募集している第7回コンテストでは、一挙に世界15都市へと規模が拡大される。それは、地域や風土によって異なる課題背景に対応して成長するビジネスアイディアや技術を最大限取り入れ、NTTデータの顧客とともに生かしていこうという強い思いからだという。国内外のさまざまな課題解決とビジネス拡大に向けて世界から東京に集まった11社は、どのような可能性を見せてくれるのだろうか。

 今回のコンテストでは優秀賞が6社、審査員特別賞が1社、そして最優秀賞が1社発表されている。今回優秀賞に選ばれたのは「センスタイムジャパン」「ゼスト」「クラウドリアルティ」「VESL」「オリィ研究所」「Studio Ousia」の6社。さらに、その中から、審査員特別賞には「オリィ研究所」、最優秀賞には「クラウドリアルティ」が選ばれた。

最優秀賞に輝いた、不動産を証券化して資金調達を実現する「クラウドリアルティ」

 クラウドリアルティ(Crowd Realty)は、不動産を利用したP2Pの直接金融システムだ。不動産を証券化することで資金調達を可能にする、いわゆるエクイティ分野のクラウドファンディングに当たる。

 登壇した鬼頭武嗣氏は「非中央集権型の直接金融システム」と表現しており、J-REITのようなもので証券化されなかった不動産が主なターゲットだという。たとえば小規模な事業者や個人が自身の不動産を担保に銀行に融資を依頼しても断られていたようなものが、クラウドリアルティを利用することでウェブでの資金調達が可能になる。実際、これで融資を断られた京都の町家が3週間で7000万円超の資金調達に成功している例が紹介されている。

 ここで集めた資金のリターンは10%などの分配金で返済していく形態となるが、従来の融資スタイルでは難しかったニッチ市場を広くカバーする仕組みとして、今回のビジネスコンテストではある意味で最もFinTechらしいスタートアップだといえる。

クラウドリアルティ 鬼頭武嗣氏

 ポイントは低コストでの証券化スキームの確立と、クラウドファンディングライクなオンラインでの取引の簡易化を実現したことが挙げられる。この分野ではさまざまな法規制があるが、それらをクリアしたうえで他社にはないシステムを構築できた点がビジネス上の大きなポイントだと鬼頭氏は説明する。応用範囲も比較的広く、たとえばオフィス賃貸における初期コストの証券化など、今後シェアリングエコノミーをにらんでの利用が可能だ。

 すでにエストニアを起点に欧州市場を視野に入れているほか、東南アジアでも事業スキームが確立されているため、クロスボーダーでの取引が可能だという。

 今後はセミナーなどを通じて投資家などの拡大を更に加速させていきつつ、NTTデータとのコラボレーションによる決済システムの改善やスマートコントラクト導入による処理の自動化、データ分析によるマーケティングへの応用などを見込んでいるという。

誰も融資を受けられなかった京都の町家が7200万円の資金調達に成功

法規制の隙間を縫ってビジネススキームを確立

介護分野とテレワークでの活用に期待「OriHime」

審査員特別賞はオリィ研究所が受賞

 社会貢献という視点から事業を展開するのはオリィ研究所だ。同社は「OriHime」というロボットを使ったソリューションを持つが、ひとり暮らしの高齢者や病気などで長期休学を余儀なくされている子供など、寂しさや孤独感といったストレスを軽減するのが狙いだと、自身の経験を交えつつ吉藤健太朗氏は説明する。

 OriHimeは自動応答ロボットではなく、あくまで遠隔操作が可能なコミュニケーションデバイスという位置付けだ。コンテスト会場ではOriHimeのデモが実演されたが、これは北海道の病院に筋ジストロフィーで入院中の協力スタッフがOriHimeを通じて会場の映像や音を認識し、それに応じたジェスチャーを沿革から指示できるというものだ。いわば自身の分身がOriHimeを通じて遠隔地でのイベントに参加できるというイメージだ。

 これを独居老人の家や入院中の子供が本来通っている学校などに置くことで、遠隔地の家族や友人とのコミュニケーションが取れる。単にビデオ会議よりも、ロボットの動きも合わせた生の反応があったほうがいいという考えに基づいている。操作そのものもPCやスマホ上から可能なので、特別な設備を必要としない。

オリィ研究所の吉藤健太朗氏とOriHime

 今後はNTTデータが取り組んでいるクラウドロボティクス基盤との連携のほか、子育てで家を空けられない従業員のテレワーク分野での活用などを進めていくと吉藤氏は述べている。

 またALSなどの難病患者向けに視線操作でPCとOriHimeの操作が可能なソフトウェアも開発しており、厚生労働省認定の非課税福祉機器としての購入も可能とのこと。特にテレワークについては、政府が推進する働き方改革との関係もあり、今後より注目される分野となるかもしれない。

今後テレワークでの活用も期待される

人材最適化ソリューションを提供する「ShareONE」

 優秀賞企業の1社、ゼストは創業約30年とスタートアップ企業としては老舗に入るが、これまで長らく受託開発を中心にさまざまな事業に取り組んできた。代表の伊藤由起子氏によれば、これまでも「世の中にないものを作る」をモットーに活動してきた経緯があり、今回プレゼンテーションを行った人材流通プラットフォーム「ShareONE」もその1つだという。

ゼスト 伊藤由起子氏

 ShareONEは簡単にいえば人材を業務内容と働く時間双方で最適化させるツールで、空き時間と適切なスキルを持つ人材の自動スケジューリングが可能になる。たとえば営業ツールとして活用すれば、必要な外部営業の最適化によって1日あたりにこなせる案件が増えるなどの効果が得られる。

 これを特に人材不足に悩む流通業界、在宅医療業界、施工業界など、特に外国人活用を考えているような分野に適用することで、より効率的かつ最適な人材配置が可能というわけだ。実際、こうした人手不足の業界では求人広告を出し続けなければ人が集まらず、一方で働く側では働ける時間が埋まらないという矛盾した事態に陥っているが、こうした問題解決の一助になると同氏は説明する。

人材最適化プラットフォーム「ShareONE」を通して可能なこと

 ポイントとしては、業界ごとに課題は異なっており、これを吸収したうえでどの分野でも最適化を可能にする点に特徴がある。たとえば東日本大震災を機に同システムを導入した確認検査機関では、対応可能な案件数が1万件から2万件と前年比で倍増するなどの効果が得られたという。

 同社ではこれを「Resource Optimization」と呼んでおり、この部分での特許も持っている。今後はさらに応用で、手術分野への適用で執刀医の対応件数増加にも対応可能になるという。

 すべてのプレゼンテーション終了後にはメディアアーティストなどの肩書きで知られる筑波大学 学長補佐で助教授の落合陽一氏による1時間の特別講演が実施された。そのほか、今回登壇した企業は以下の8社だ。



高齢化時代に向けたスマートな医療サービス「NOMOCa(ノモカ)」。GENOVA 平瀬知樹氏 防災救急に役立つシール型QRコード「爪Q(ツメキュー)」。オレンジリンクス 吉田裕貴子氏と杉本一彦氏



画像認識AI技術に秀でた「センスタイムジャパン」。センスタイムジャパン 勞世竑氏 ソーシャルやコミュニティーサービスを組み合わせた小口保険「Smallticket」。Smallticket Julie Jong-Eun Kim氏



取引集約で小口のトレードファイナンスもカバーする「VESL」。VESL Maureen Ledesma氏 簡易でセキュアな認証プラットフォームを提供する「ROWEM」。ROWEM Byoung Ki Kim氏



AIを使った動画編集支援システム「GliaStudio」。GliaCloud David Chen氏 AIを使ったヘルプデスクソリューション「QA Engine」。Studio Ousia 阪本道子氏

 最優秀賞には3ヵ月間にわたるサポートコンサルチームが編成されフルサポートお受けながら、NTTデータの事業部とともに受賞案件に関するビジネス化を進行する。また、優秀賞企業にもNTTデータ各事業部との受賞案件に関するビジネス商談の場を与えられる権利が提供される。

 今回も、コンテスト後には、早速協業希望を示した事業部が協業に向けた個別の打ち合わせを開始している。過去のコンテストにおいても、マネーフォワード、freee、Sasso、unneryなど、名だたる受賞企業がこのような過程を経て事業展開やPOC実施を進めている。今回、最優秀賞を射止めたクラウドリアルティのロングテールを広くカバーするFintechビジネスモデルが、今後、NTTデータとの検討により、どのように拡大発展していくか、海外展開も含めて期待したい。また、合わせて現在、企業の募集をしている世界15都市予選が開催される第7回オープンイノベーションコンテストの行方も注目していきたい。

(提供:NTTデータ)

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