今後の運営方針に込めたNICT新理事長の決意



 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、国立研究開発法人情報通信研究機構の徳田英幸 理事長と、米Adobe SystemsのShantanu Narayen CEOの発言を紹介する。


国立研究開発法人情報通信研究機構の徳田英幸 理事長

「世界最先端の情報通信技術を実現し、実空間とサイバー空間の融合を加速したい」
(国立研究開発法人情報通信研究機構 徳田英幸 理事長)

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が先頃、今年4月1日に同機構の理事長に就任した徳田英幸氏の記者会見を初めて開いた。冒頭の発言はその会見で、徳田氏がNICTの使命について語ったものである。

 NICTは総務省所管の国立研究開発法人で、情報通信分野の研究開発を行っている。職員数は約1000人で、そのうち研究者は約520人。その約9割が「PhD」を取得している。

 徳田氏によると、NICTが現在、重点研究開発分野として取り組んでいるのは次の5つである。1つ目は「センシング基盤分野」で、ゲリラ豪雨などの早期捕捉につながるリモートセンシング技術、電波伝搬などに影響を与える宇宙環境を計測・予測する宇宙環境計測技術などが対象だ。

 2つ目は「統合ICT基盤分野」で、IoT(Internet of Things)を実現する革新的ネットワーク技術、人・モノ・データ・知識などあらゆるものをつなぐワイヤレスネットワーク技術、世界最高水準の光ファイバ網実現に向けた大容量マルチコア光交換技術など。3つ目は「データ利活用基盤分野」で、人工知能(AI)技術を利用した多言語音声翻訳技術、社会における問題とそれに関連する情報を発見する社会知解析技術、脳情報通信技術などが対象だ。

 4つ目は「サイバーセキュリティ分野」で、次世代のサイバー攻撃分析技術、IoTデバイスにも実装可能な軽量暗号・認識技術など。5つ目は「フロンティア研究分野」で、盗聴・解読の危険性がない量子光ネットワーク技術、酸化ガリウムを利用するデバイスや深紫外光を発生させるデバイスの開発技術などが対象となっている。

 徳田氏は「この5つの研究開発分野を柱として、世界最先端の情報通信技術を実現し、私たちが居る実空間とネット上のサイバー空間の融合を加速していきたい。これによって、社会問題の解決のみならず、健康、医療、交通、物流、公共サービスといった幅広い分野で、社会システムの効率化および最適化に貢献していきたい」と語った。

 そこで、同氏はNICTの今後の運営方針として、「Collaboration」「Open Mind & Open Innovation」「Challenger’s Spirit」の3つを掲げ、それらの頭文字を取って「COC」を推進していく決意を表明した。同氏がCOCに込めた思いは下図に示されている通りである。とりわけOpen Mind & Open Innovationは、「Open Innovationを支えるためのOpen Mindが非常に大事」と強調していたのが印象的だった。


図:徳田氏が掲げた今後のNICTの運営方針

 NICTは日本の情報通信分野の研究開発力を映し出すだけに、徳田新理事長の手腕が大いに注目されるところである。



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