東京モーターショーの「撮影」がプロでも難しい理由



スバルはクルマが宙を舞っていた。クルマは見やすいが、撮影は難しい

東京モーターショーが閉幕した。来場者にとって、肝心の車両は見やすくて好ましい展示方法だったのか、撮影しやすい空間だったのか、プロのカメラマンとして仕事している筆者の立場から振り返ってみた。(取材/写真/文 ライター・フォトグラファー 雪岡直樹)

 第45回東京モーターショー2017が閉幕しました。10月25日のプレスデーから始まり、特別招待日、オフィシャルデー、プレビューデーが挟まり、10月28日の一般公開日から11月5日まで、12日間で77万1200人の来場がありました。前回の2015年より約4万人少ないそうです。

 しかし台風の影響や最終日はトランプ米大統領の訪日、平日は10時から20時まで公開されていますが、日曜日は10時から18時と短い公開時間などを考慮すれば、健闘しているのではとも思えます。その中で、来場されたお客様は、お目当ての車両をちゃんと見学できたのかというのが気になります。

来場者は展示風景に
満足したのか

 筆者はプレスデーの2日間のほか、平日の一般公開日にも会場を訪れてみました。プレスデーはあくまでもプレス・マスコミ向けの展示となっており、プレスカンファレンスの都合で展示車が少なかったり、ステージパフォーマンスは行われません。一般日になってやっとそのブースの全容が分かるようになるからです。

 ステージに上がっているコンセプトカーに当たる照明や、ステージパフォーマンス、ナレーターによるプレゼンテーションなどにより、そのブースを訪れるタイミングに応じて刻々と変化していきます。

 ずっと同じメーカーのブースに居れば、同じパフォーマンスを何回も見て、「次はこういうパフォーマンスが行われる」というのが分かるかもしれません。

トヨタのブースはさまざまな色に変わる間接照明的なライティング

 もっとも、ずっと同じメーカーのブースにいるわけでもなく、さまざまなメーカーの車両を見るのがモーターショーの楽しみだと思います。

 訪れた瞬間に、そのブースで気になった車両を見ることができたのか。気になるところです。

 各社の展示ブースは、「イメージ」を見せるタイプと「車両」を見せるタイプの二つに大別されます。

 トヨタブースは、まさしくイメージを見せるタイプの典型でした。このため、天井から円形のオブジェが多く吊るされ、そこにLED照明が当てられ、さまざまな色に変わる間接照明的なライティングになっていました。

 コンセプトカーが飾られたステージや平面に置かれた車両も、その頻繁に変わる照明の影響を受けて、時には白く、時には紫に照らし出されています。

 プロカメラマンの筆者が考えても、果たして一般の方が露出や色合いを補正できる一眼レフのデジタルカメラを使ったとしても、車両の正しい色が映し出されたのかどうか疑問が残ります。手軽にスマホで写真を撮る人が多いことを考えると、あまり頻繁に照明の色を変えるのではなく、少し長めの周期で照明を変えていったほうが「写真を撮る」という観点では良かったのでは…と思います。

 他のメーカーは間接照明のようなライティングではなく、全体的にブースが暗めとなっており、展示車両の上部から真下にある車両に対し、光を落とすような照明が多くあったと感じました。

 すると車両のルーフとボンネットは明るいが、フロントグリルやタイヤホイールの部分には光が回らず、上面は明るいが下面は暗いという状況になります。

 こういう状況になると、ストロボを焚かないと暗い部分は明るく撮れません。ステージに上がっている車両は配置が高いのと、車両の周りに観客がいない事で写真も撮りやすいでしょう。ストロボを焚いても問題なく撮れると思いますし、スマホで撮っても綺麗に撮れたのではないでしょうか。

 問題は平面に置かれている車両です。

 その車両を撮りたくても近くからでは車両全体が入らない、車両全体を撮ろうと少し離れると観客がどんどん前に入ってくる。そのような状況でストロボを焚くと見ている人から嫌な顔をされてしまうことも少なくありません。

スズキのブース。明るくて写真は撮りやすい

 そもそもスマホではストロボを焚くことはできず、かといって、本体に付いているライトは役に立つわけもありません。するとその状況で撮るしかなく、明るさのバランスの欠けた写真が撮れた方が多いのではと思えます。

 一方で、軽自動車を展示していたスズキやダイハツは、ステージも明るく壁面全部のモニターなど設置したり、ブースも大きくとり展示車両も多くあります。これらはまさしく、「車両」を見せるタイプの典型でしょう。

 なによりもブース全体を明るくし、車両が見やすいようにしています。しかも、床を白や明るいグレーなどにしています。

 これはどういう効果を産むかといえば、ブース全体が明るくなるのはもちろん、上部から当てられた光が床で反射して本来なら暗くなるグリルやタイヤなどを明るく映し出してくれます。

 すると、光が全体的に回り、車両も撮りやすくなります。もちろん車両全体を撮るのに少し引けば他の人が入ってきてしまう状況は変わりませんが、人の途切れた瞬間に写真を撮ってもそれほど残念な仕上がりにならないのではと思えます。

撮影が難しい
マツダとスバルのブース

 もちろん、そのメーカーの特色やブランドのイメージでブースは設計され、照明も配置されているのは理解できます。

 では、そのブースのイメージを説明しているか、といえばどこにも説明されていません。どこかに説明板があるわけでもなく、会場で配られるパンフレットにも書かれていることもありません。

「観客に何を伝えたいのか」「このブースは何を意味しているのか」などをいちいち説明するのは無粋なのかもしれませんが、「このメーカーはこういうことを示している」というのがブース展開や照明で分かるようになってもよいのではないかと思えます。

 大きなモニターを設置してイメージ映像を流すのも重要かもしれませんが、もう少し分かりやすさがあってもよいのかとも思えます。

黒が基調のマツダブース。撮影は非常に難しい

 その中でもマツダやスバルは、良い意味でも悪い意味でも気になりました。

 マツダはここ数年、黒基調のブース展開を行っています。

「真っ黒の中に赤い車両」というのが定番となっていますが、実は写真を撮るには非常に難しい部類です。

 赤という色は、今のデジタル技術でも再現が難しい色です。しかもバックが黒いと、余計にカメラの露出機能が悩んでしまい、明るいか暗いかどちらかになりやすいのです。

 これは、カメラの基本性能に起因します。カメラの基本性能として黒を黒く、白を白く撮るには補正してあげなくてはなりません。そのまま撮ると、中間の色になるよう撮るのが基本性能だからです。なので、黒バックに赤い車というのは非常に難しいのです。しかし今年は、「黒」基調は変わりませんが、車両にしっかり光が当たるようになっていました。それによって「綺麗な赤」が表現されていると思われます。

 スバルは会場内では唯一、コンセプトカーが宙を舞っていました。

 展示されている状態より1段上まで持ち上がりグルグル動くので、「どの角度にいても車両が見やすい」という意味では非常に効果があると思われます。

 しかし、意外に動きが早い上、照明がそれほど明るくないので、これも普通に撮ってしまうと手ぶれや被写体ぶれの残念な写真になってしまいます。

 カメラの感度をあげたり、シャッタースピードを速くしたりといった工夫が必要となります。「遠目でも車両が見える」という意味合いでは良いかもしれませんが、写真を撮るのにはハードルが上がっているかもしれません。

ネット上の写真では
分からないことも多い

 会期中は混雑する日も多くあったと聞きますし、後半の三連休は1日で10万人を超える来場者がいた日もありました。

 会場に足を運んでも、満足いく写真が撮れなかった方も多かったかもしれません。

やはり、ネットだけでなく、現場で展示されている車両を実際に自分の目で見て確認してほしい

 一方、ネットの世界には各媒体により車両の写真が数多く掲載されています。このため、「わざわざ会場に行かなくてもネットで十分」という声も少なくないようです。

 ですが、ネット上の写真には、果たしてボディやインテリアの色味、シートの素材など忠実に映し出されていたでしょうか。

 また塗装の質感やボディラインなども、ネットに上がっている画像を見て、実感できたでしょうか。

 筆者もカメラマンとして現場に行き、多くの車両を撮影しましたが、再現しきれてない場合もあり、反省することもあります。

 ゆえに、ここまで各ブースの問題点などを指摘して来ましたが、やはり現場で展示されている車両を実際に自分の目で見て確認してほしいところです。

 また展示を行うメーカーも、車両をよく見せるようなライティングや配置などを研究してほしいと感じた次第です。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら



カテゴリートップへ




こんな記事も読まれています



コメントを残す