皮膚の油脂が不具合 富士通制生産ラインの徹底した品質管理



業界人の《ことば》から
第276回

富士通コンポーネットの海外拠点を見た

2017年12月21日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

今回のことば

 「不具合を検証した結果、小さな異物や皮膚の油脂が原因であることがわかった。そのため、生産ラインでは、防塵服の着用を義務づけたり、異物を取り除く工夫を凝らしている。高品質の製品を作り続けるための改善を常に行なっている」(FUJITSU COMPONENT (MALAYSIA)SDN.BHDの柳澤正伸社長)

マレーシア・ジョホールのFUJITSU COMPONENT(MALAYSIA)SDN.BHD

 リレーやコネクター、キーボード、タッチパネル、無線モジュール、サーマルプリンターなどを生産する富士通の子会社「富士通コンポーネント」の海外法人のひとつが、マレーシア・ジョホールに拠点を置く、FUJITSU COMPONENT(MALAYSIA)SDN.BHD(略称・FCM)である。

 ここではキーボードおよびリレーの生産をしており、富士通クライアントコンピューティングが発売する世界最軽量の13.3型ノートPC「LIFEBOOK UH75/B3」向けのキーボードも、FCMで生産されている。

 富士通コンポーネントは、1917年に創業した高見澤電機製作所と富士通が持つコンポーネント事業を統合し、1995年に富士通高見澤コンポーネントを設立したのが始まりだ。2001年に富士通コンポーネントに社名を変更。同年に東証二部上場を果たしている。

 国内には製造子会社として、しなの富士通、宮崎富士通コンポーネント、千曲通信工業を擁し、海外ではマレーシアのほかに中国の青島、常州に現地生産法人を持つ。さらに販売子会社として国内にはテックがあり、海外には北米、欧州、アジアなどに6つの販売拠点を持つ。

 独自ブランドのキーボードとして「リベルタッチ(Libertouch)」を製品化。キーボードにうるさいユーザーからも高い評価を得ている。

 また昨今では、同社が生産する各種製品を組みあわせた複合製品の開発にも力を注いでおり、タッチパネル、トラックボールマウス、サーマルプリンターを組みあわせた医療機器用操作パネルやFA機器用操作パネルなどを製品化している。

部品組立工程では異例の徹底した品質管理体制

 実際にマレーシアの現地に出向いて驚いたのが生産ラインにおける徹底した品質管理が実現されていること、そして生産ラインの自動化が推進されている点だ。

 東南アジアや中国の生産拠点の多くは安い労働力を活用することを優先するため自動化が遅れていたり、品質向上のための改善策については日本の生産拠点よりも対応が遅れたりするケースが目立つ。

キーボードの生産ラインの様子。防塵服を着用して作業をしている

 しかしFCMでは、リレーの生産において完全自動化ラインを稼働。リレーの生産およびキーボードの一部生産ラインでは防塵服を着用して作業するといったように、品質管理への取り組みを徹底しているのが特徴だ。国内のIT関連生産拠点でも半導体生産などでは防塵服を着用する例があるが、部品組立工程では異例の措置だ。

FUJITSU COMPONENT(MALAYSIA)SDN.BHDの柳澤正伸社長

 FCMの柳澤正伸社長は「これまでに発生した不具合を検証した結果、小さな異物が混入したり、作業者の皮膚の油脂が付着するといったことが原因になっていることがわかった。高品質の製品を作り続けるための改善を常に行なっており、その結果生産ラインでは防塵服の着用を義務づけたり、異物を取り除くための各種工夫を凝らしている」と語る。

 FCMは1980年10月に創業。1982年11月にはリレーコイルの生産拠点として操業を開始した。それ以来の改善の歴史が生産ラインにおける品質管理の徹底につながっている。

 今回の取材では実際に生産現場にも入ったが、その際にも防塵服を着用するだけでなく、エリアによっては手袋の着用も義務づけられた。さらに外から会議室に入るとき、会議室から生産棟に入るとき、さらには生産ラインに入る際にもそれぞれ靴を履き替えるように指示された。

 それぞれのエリアを明確に分類しており、靴底を通して異物が生産ラインに持ち込まれないようにするための措置だ。しかも生産ラインに入る際には靴底洗浄機で靴底のゴミを洗い流すことが徹底されているエリアもあった。

 作業エリアはホワイトルームという呼び方をしているが、作業環境はクリーンルームに近い徹底ぶりとなっている。

 また生産ラインでの異物混入に対する工夫も随所で見えた。たとえばキーボードのキートップを供給する部品ケースには底や側面に小さな穴が開いており、これを振動させることで部品ケースに混入した異物を落とす。このように生産ラインに部品を供給する前に異物を除去する仕組みはあちこちで採用されている。

 さらに機械や人による検査工程をいくつも設けることで源流に近いところで不具合を発見する仕組みを採用しており、これも不良率の削減につながっている。とくに今年度からは源流管理の強化に取り組んでおり、早い段階で不具合を発見し、後工程に影響がないように改善をしている。

 また使用する部品の内製率を高める取り組みもFCMの特徴のひとつだ。キーボードやリレーに使われる多くの部品がFCMのなかで作られており、金型もFCM内で自ら生産することで樹脂の成形精度の高さを実現している。これらも品質へのこだわりの表れだといえよう。

 2016年にはQCサークルの世界大会にマレーシア代表として出場。そこで金賞を受賞しており、FCMの生産品質は世界的にも評価されている。







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