廉価版とは言わせない、iPhone 8に秘めたアップルの野心:「A11 Bionic」がカギだ(BUSINESS INSIDER JAPAN)



新iPhoneが発表になると、注目はどうしても「最上位機種」に向く。特に今年はそうだろう。ティム・クックCEOが「スマートフォンの未来」「次の10年の始まり」と位置付け、“画面下部のホームボタン“というiPhoneの伝統を崩してまでデビューさせた「iPhone X」は、当然注目に値する製品だ。

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しかしここであえて、そこに反論を加えたい。iPhone 8シリーズは、Xシリーズの「中継ぎ」では決してない。ひとつの結論として、iPhone 8シリーズの設計は、実は「かなり先を見た布石」を打った製品になっているからだ。
ホームボタンがあり、画面のサイズ・縦横比も変わらないiPhone 8は、使い勝手の面では「保守」に見える(一面の事実ではある)。ただし、重要なのは「iPhone Xと8の共通点」だ。これこそが、次の世代のiPhoneを読み解く重要な要素だ。

先頭を走り続けるための「独自半導体+ソフト」という差別化

iPhone 8シリーズを考える上で注目すべきは、今回採用されたプロセッサ(半導体)だ。今年アップルは、iPhone 8シリーズとiPhone Xで、新プロセッサーである「A11 Bionic」(エー・イレブン・バイオニック)を採用した。

A11 Bionicは、これまで以上に「アップルが独自開発した」(アップル関係者)部分が多い、より野心的なプロセッサーだ。処理速度や消費電力なども工夫はされているが、なにより注目すべきは、「独自のグラフィック・プロセッサ(GPU)」「撮影処理を改善するイメージ・シグナル・プロセッサ(ISP)」、そして「バイオニック・ニューロエンジン」の搭載である。

技術にそこまで詳しくない人に解説しておくと、GPUは主に3D処理(ゲームなど)の高度化を、ISPは動画・静止画の品質を上げるものだ。では最後の「バイオニック・ニューロエンジン」の役割は? 簡単にいえば、環境やモノの認識、いわゆる「AI処理」を高速化するものだ。

例えばiPhone Xでは、顔認識でiPhoneの画面ロックを外す「Face ID」が採用された。その背後では、バイオニック・ニューロエンジンが処理の高速化を担い、すばやい顔認識を実現している。

画像認識・音声認識・行動認識といった要素は、いわゆる「AI処理」としてまとめられており、今後スマートフォン差別化のカギとなる。
そしてここが重要なところだが、バイオニック・ニューロエンジンは新機能「Face ID」のためだけに用意されたものではなく、iPhone内での「AI処理基盤」だ、ということだ。

AI処理を高度化していくことで、スマートフォンは人のパートナーに近づいていくが、そのためには、処理性能も圧倒的に強化されなくてはならない。“バイオニック“の呼称は「生体工学」という語義通りの意味ではなく、「生体強化」的なニュアンスで使われている。生命のしなやかさをもった強化、といった趣だろうか。

主要半導体メーカーの多くは、自社のハイエンドスマホ向けプロセッサーに、「バイオニック・ニューロエンジン」と同じような「AI処理支援技術」の採用を進めている。世界3位のスマートフォンメーカーである中国の通信会社大手ファーウェイは9月1日、「モバイルAIを実現するもの」として、新しいハイエンドスマホ向けプロセッサ「Kirin 970」を発表した。このKirin 970には、A11 Bionicと同様、AI処理負荷を軽減する「NPU」(ニューラル・プロセシング・ユニット)を搭載している。AI処理を半導体で支援して高めるのは、次世代スマホのトレンドなのだ。

アップルはなぜ、最上位機種だけでなく、iPhone 8にも同じA11 Bionicを使ったのか?

理由は明快だ。これまでになくAIネイティブなスマホの裾野を一気に広げる ーー そのために、全世界で相当な台数が出るだろうiPhone 8の存在が重要だった。「AI支援機能をハードウェア的に備えたプラットフォーム」を世に出すにあたり、アップルは一気に世界最大の「数」も狙ったということになる。

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